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議事録

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本日の会議に付した案件

  • 国際問題に関する調査
    (「新しい共存の時代における日本の役割」のうち、東アジア経済の現状と展望(東アジア地域の経済統合)について)

○会長(関谷勝嗣君)

 ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。

  国際問題に関する調査を議題といたします。

&nbsp本日は、本調査会の調査テーマである「新しい共存の時代における日本の役割」のうち、東アジア経済の現状と展望に関し、 東アジア地域の経済統合について参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。

 本日は、青山学院大学経済学部助教授深川由起子参考人及び国際経済交流財団会長畠山襄参考人、お二人に御出席をいただいております。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 両参考人におかれましては、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。

 本調査会では、東アジア経済の現状と展望につきまして重点的かつ多角的な調査を進めておりますが、 本日は、東アジア地域の経済統合についてお二方から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 本日の議事の進め方でございますが、まず深川参考人、畠山参考人の順でお一人三十分程度で御意見をお述べいただいた後、午後四時ごろまでを目途に質疑を行いますので、御協力をよろしくお願いをいたします。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、早速、深川参考人から御意見をお述べいただきます。深川参考人、よろしくお願いいたします。

○参考人(深川由起子君)

よろしくお願いいたします。

 隣にいらっしゃいます畠山参考人は私のかつての上司でございまして、 通商政策の専門家でございますので、緻密なお話は畠山参考人の方にお譲りするとして、 私はアジアを研究しています立場から、若干ざっくりした東アジアの経済統合と日本の対応 ということでお話をさせていただきたいと思います。

 まず本日の私の報告ですけれども、東アジア全般に、皆さんも御承知のとおり、 九七年から通貨金融危機が始まりましてかれこれ五年がたったわけですけれども、 五年を経て、比較的当初の混乱の中予想していたよりは回復をしていまして、 その中で非常に新しいアジア像というのができてきている、 非常に大きな構造転換を伴ってきているという話と、その中から日本が何を得るかという話と、 そして三番目として、既に東アジアの地域協力というのは様々な形で進んでいるんですけれども、 それが持っている性格、そして今のところは恐らくASEANプラス3というのがほぼ域内の 共通のゴールとして目指されているんですけれども、ASEANプラス3の中のいろいろな現在の交渉の動きも 非常に錯綜しておりますので、それを少し述べた後、最後に、 じゃこれからどうするかという順番で進めさせていただきます。

 東アジアの通貨金融危機以後の大きな構図なんですけれども、 比較的順調に回復はしてきましたけれども、端的に言ってやはりASEANの傷はまだ深くて、 特にタイやマレーシアのように早く対応してきているところもあれば、 インドネシアのように体制自体がやっぱり混乱が、依然として安定していないというところもありまして、 全体として見渡しますと、やっぱり中国の台頭が際立って、それにつられる形で韓国の回復も早いですし、 空洞化しているといっても台湾は割に安定していますので、大きなピクチャーとして東南アジアが 通貨危機の前が割に成長センターであったとすると、北東アジアにやっぱり重心が移ってきている ということは一つ言えると思います。特に、その北東アジアの対応力というのは、単に物を作るという、 安く作るというハードだけではなくて、いろいろなソフトパワーに支えられているということに 着目しておきたいと思います。

 通貨危機以降、割に早く立ち直ってきた国を見ますと、共通して言えますことは、 やっぱりこのソフトパワーを比較的有している国であった。例えば、 危機になったわけですから直接投資を誘致するしかないので、その直接投資誘致に向けて 迅速に動いていけるかとか、あるいは通貨危機後しばらくの間はITブームでございましたので、 そのITブームにいかに早く乗れるかとか、あるいは旧時代の企業家、 財閥のような企業グループがさんざんつぶれた後に新しい企業がいかに早く出てくるかという対応力。 それから、政府の能力としても、迅速に政策を立案して、またそれをちゃんと実行して世界の投資家から 資金を集めなければなりませんので、その政策責任が非常にしっかりできる国というのはやっぱり 市場の信頼が早いですので、いかにも回復はやっぱり早かったわけでございます。

 それから、全般に市場の能力も弱い国が多かったんですけれども、各国みんなやっていることは 似たようなことでして、公正取引法を見直すですとか市場の参入・退出制度をもっとフレキシブルに できるようにするですとか、会計制度を変えて透明化するですとか、どの国もみんなまだ若い国ですので 不十分な機関投資家を中長期の株主として育成していくとか、あるいはその過程で少数株主を保護していくとか、 マーケットの能力全般を強化していくということをやっています。 その市場能力と政府の能力をやっぱり両方できている国は信頼を非常に早く取り戻しているので立ち上がりが早いと。

 ここで見ていきますと、やはり英語圏でないというハンディキャップはありますけれども、 中国や韓国や台湾というのは割とやっぱり早くその時代の変化というのは感じ取って対応してきていますし、 そうでない国もあると。

 共通するものとして、各国やっぱり階層間の格差、非常にIMF型の新自由主義の改革をすると やっぱり所得格差が大きくなるというのは全般的な傾向としてありまして、 中間層が薄くなってしまったり、あるいは地方と都市の格差というのが非常に大きくなったり、 あるいは年代間の格差、やっぱりIT対応が早いのは若い層に、どこの国でもそうですので、 年代間の格差。こういう格差が広がっていく一方で、アジア全体として見ると、 そのグローバル化あるいはIT化によってつながっていく、時代に早く対応している国と そうでない国の差が出てきているということが言えると思います。

 北東アジアが東南アジアに代わって強い成長センターとして出てきているということなんですけれども、 北東アジアの場合は東南アジアと比べてやっぱり考えなければいけない要素がございます。

 一つは、依然としてこの地域には冷戦構造が残存しておりますので、 非常に各国ともフルセット型の、自国の中にあらゆる産業を抱え込もうとする傾向というのを持ってきたし、 依然としてこれがまだ残っています。それは、よく見れば比較的厚い産業基盤を有していますし、 比較的技術吸収能力も高いと。中国の昨今の非常に早いキャッチアップに見られるように、 理工系の人材の豊富さというのは東南アジアと層が全く違いますので、やっぱり技術の吸収能力も非常に高いと。 その一方で、冷戦対応をずっと行ってきていましたので、どこも政府は強くて大きい。 経済面ではある種の産業ナショナリズムを抱えています。

 そして、日本に対しては特にですけれども、やっぱり歴史問題等もありますし、 そこから発してくる相互信頼の欠落というのはございます。 さらに、かつては日本語で通じた人脈というのはもう圧倒的に細っておりますので、 旧来の人脈というのは非常に細っている、こういう地域でございます。これは東南アジアとは少し違う、 特に日系企業の域内分業が非常に支配的な東南アジアと大きな構造の違いで、 相手になる人たちが非常に地場企業であるということを意味します。

 それから、この地域ですけれども、今後は非常に構造的な変化が進行していきまして、 一つは高齢化が雁行形態型に進む。日本は一番最初に高齢化していますが、 これを追って韓国、中国の順に非常に速いピッチで高齢化していきますし、環境ですとか、 それに伴って中国の成長、非常に速いまま続くとすると、 環境とかエネルギーとかというのはかなり問題が出てくる可能性もあります。 そして、中国は一体どういうふうに体制を変えていくかということも問題はありますし、 割ともはや長期ではない問題として朝鮮半島の安全保障問題もあると。 非常に成長構造として有利な点もありますけれども、非常に構造的な変化は進むし、 潜在的なリスクというのは常に大きいまま成長を続けていこうとしている地域であると。

 こういうピクチャーを思い描いてお話をしますと、 私たち、私及びその周辺の友人たちが考えていますこういう東アジアと、 じゃどうやって付き合っていくかというのは、やっぱりかなりのメリットが日本にとってあるんではないかと。 特にFTAあるいは経済緊密化協定を使ってしっかりとした協力関係を作っていきますと、 いろんなメリットがあるんではないかということです。

 今までアジアといえば安価、良質の労働力だったんですけれども、 これはもう日系企業は細かく域内拠点を配置していますので、 むしろ物流の速度ですとかIT化によってその拠点間のコストが削減できるということは重要でございますし、 それにとってはAFTA、ASEANですとASEANの中での自由貿易協定、 AFTAを早く完成してもらう。あるいはマスコミでは中国・ASEAN自由貿易協定が先に進むと 非常に日本は不利だというような報道もございますけれども、 実は日系企業はたくさんASEANにも立地しているので、中国は関税を下げてくれて、 ASEANから中国に輸出できることは決してそんなに悪い話でもない。

 ただ、アジア全体の自由化が早く進んで日本が取り残されていきますと、 やっぱり企業は活動がしやすい方に流れていきますので、日本にとっては必ずしもよくない。 日本企業にとってはいい環境かもしれないけれども、日本の雇用ですとか日本の問題にとって 必ずプラスかどうかというのは分からないということです。

 あともう一つ、いろんな協力の枠組みができますと、先ほど申し上げたように、 やっぱり北東アジアは相手が日系企業ではなくて地場企業になることも多いですし、 非常に産業構造も競合的でございます。電子・電気、石油化学、鉄鋼のこの三つで輸出の五割を占めるという構造は、 日本、韓国、台湾、中国すべて一緒でございますので、やはり競争的な中で、 じゃ何が日本にとって有利かといえば、貿易に関連した投資法制だとか、相互基準認証だとか、 あるいは摩擦が起きたときの紛争処理メカニズムだとかというのがやっぱりしっかりでき上がっていく。 そして後で申し上げるように、MアンドAとかを通じて迅速に構造調整が進むことは 我々にとってメリットだと考えるわけです。

 特に、非常にこれらの産業、五割を抱えているような産業、過剰設備投資、 日本にもございますしアジアにもございますので、やっぱりクロスボーダーで MアンドAのようなものが迅速に進んでいきませんと、この地域はヨーロッパやアメリカに比べて 構造調整の速度は遅い地域になってしまいます。

 それからもう一つは、当然、いろんな協力関係を結んでいきますと、 技術を売る市場としてキャッチアップする能力が高いということは、 技術を売れる市場であるというふうにも考えられるわけでして、 日本が自分の持っている資産としての技術をしっかり守れるような特許制度を整備し、 売る側では知的な財産権保護をしっかりやってくれれば、 東アジアの技術市場としてのポテンシャルは非常に高いですし、その技術が活用されていくためには、 理工系の人材ですとか多様な人材を抱えておりますので、ビザをもっと自由化して、 少なくとも理工系の人たちには、専門家の人たちにはかなり自由な動きができた方が望ましい。 あるいは共同研究をしたり、ベンチャーキャピタルをしたりしてアジアのマーケットから ゲインを得るということもあろうかと思います。

 それから三番目に、文化ですとか観光ですとか、環境、医療、福祉、日本が私は戦略的に 重要であると思っている産業ですけれども、これらの産業についてもアジアが割と 後背地になってくれる可能性というのはあると思います。

 どんなに高成長をしていてお金持ちになっても、きれいな水ときれいな空気というのは 容易には買えませんから、日本に行って観光したい、あるいは日本に行って日本の文化だけではなくて、 この国はやっぱりマーケット大きいですので、世界の一流の文化というのは来てもらえますから、 取りあえずアメリカとかヨーロッパまで行かなくても日本に行ってやっぱり世界の一流の文化に触れたい、 こういう欲求というのはやっぱり所得が高い階層には物すごく強くあるわけですね。

 本気で観光誘致に出ますと、こういう人たちというのはたくさんのお客さんになってくれる 可能性というのはもちろんありますし、それから、アジアも高齢化をしていきますので、 日本が医療、福祉で非常に先進的なビジネスモデルを作って幸福な国になれば、 それはまたそのビジネスモデルがやっぱり通じるマーケットとしても出てきますし、 アジアのお金持ちの中にはやっぱり是非とも日本に行って高度の医療を受けたいという 潜在的な人たちは非常にたくさんおります。そういう意味でも、 可能性というのはたくさんありますが、これは当然のことながら、 やっぱり人の移動がある程度は自由にいくということが前提です。

 それから、私ども少子高齢化に直面しておりますので、 やっぱり人材の調達というのは戦略的に考えていかざるを得ませんが、 その中で最近行われてきております資格の共通化ですとかを通じて、 一定の能力を持った人たちが来てもらえるというのは非常に助けになると思いますし、 地方に行きますと、既に出てきています外国人労働のやっぱり実態に即したビザ制度というのは もはや考えていかざるを得ない時期に来ている。

 経済統合が進むと、今までのような物の貿易、物の貿易は既に日本は大変関税は十分に低い国、 世界では最も低い国の一つでございますので、もうこれ以上関税下げる余地というのは 農水産物を除けばそんなにあるわけではない。その農水産物以外のものですと、 やっぱり人の移動とか情報通信とかサービスとか決済システムとか金融の部分とか、 プラスアルファの部分をやっぱり積んでいかざるを得ないということがあると思います。

 いろいろ考えていくとメリットはあると思うんですけれども、東アジアにはこれまで、 ヨーロッパが通貨にまで進んだ統合を達成し、NAFTAが北米自由貿易協定から 南北アメリカの統合に進んでいこうとしている速度に比べると、 東アジアは非常にばらばらなままこれまで実際に来ました。 本当に地域協力が必要ではないかという機運が出てきたのは、正に通貨危機の後で、 これは通貨危機で非常に各国とも苦しい目に遭ったので、やっぱり域内ではお互いに協力しないと、 外からの投機ですとかいろんなものも含めて、ショックに遭ったときに非常に弱いということが 痛烈に分かったわけですし、このときに日本は新宮澤構想等を通じて非常に多額の支援を してきたわけですけれども、当初はそれとそれぞれの危機当事国がくっ付く形で協力がなされてきたわけです。

 これを一つのモーメンタムとしているもんですから、東アジアの統合というのは通貨とか金融とかという部分が、 通常の常識ですと、物の自由化から始まって、サービスの自由化、人の移動、金融の統合というふうに 進むんですけれども、むしろ危機から始まっているので、通貨とか金融のところを含んだ形で、 ある種ビッグバン的な協力の機運というのはあると思っています。

 ただ、その通貨危機当初のときに、従来この地域での地域協力の仕組みとしてAPECというのが あったわけですけれども、APECは非常にふわっとした集まりでして、危機にはほとんど役に立ちませんでした。 それへの非常に強い反省というのもあって、非常に、今度は中核メンバーが割と明確な ASEANに日中韓を加えた枠組みというのが東アジアの大きな共通の枠組みとして出てきているということです。

 ただ、これに対するアメリカの立場、AMF、アジア通貨基金構想に反対したときのように 非常に微妙なものがありますし、アメリカだけではなくて、豪州、オーストラリアですとかといった ケアンズ・グループも、ASEANプラス3というのはかつてマハティールさんが提唱した 東アジア経済ブロック、EAECのようなものじゃないかという疑惑を持っている人たちもいますし、 非常に微妙な視点がございます。

 そういったことなんですけれども、結局この地域というのは、ヨーロッパですとか 北米あるいは南北アメリカに比べると余りにも多様で、余りにも様々に発展段階も違い、 政治経済体制も違うものですから、やっぱり簡単に協力体制というのができないということがありましたし、 何といってもやっぱり安全保障と全然違う枠組みの協力体系を持っている国、 FTAとかを持っている国というのは非常に少ない、多分ないと思いますが、 アジアの場合は安全保障の枠組みは中国と日本では明らかに違うわけで、そういう関連もございます。

 そしてさらに、ナショナリズムをそれぞれに抱えているといったこともあるので、 結局NAFTA型のように、じゃ、だれかが強いリーダーシップを取ってすごい勢いでやるかというと これはなかなか難しいですし、かといって、じゃ南北アメリカのように二か国間のFTAの積み上げで、 アメリカ・カナダ、アメリカ・メキシコ、アメリカどこどこというふうに積み上げていくかというと、 国の数が多いものですから、二か国間を何十か国でもやるととんでもなく錯綜してしまうということもあります。

 NAFTAのような、あなたがこれに違反した場合はこうなんですという、 すごい条約でめちゃくちゃに厳しく縛るようなタイプがなかなかできる地域でもないという限界ありますし、 一方、じゃ、ユーロ型にできるかというと、やっぱりユーロのように共通の理念とか あるいは戦争をしないという共通の目標というのは取りあえずないですし、 それからユーロの場合には、関税同盟とは言いませんけれども、 ECからいろんな段階を経て進んできているんですけれども、 そういう段階を経てどういう仕上がりでいくかという設計もまだないと。

 結局、みんなが、APECのときは正にそうだったんですけれども、できるところベースで、 ボランタリーに協力すると。コンセンサスを中心として、だれかが圧倒的なリーダーシップではやらないと。 お互い内政には不干渉で、ゆっくりと進んでいくというのがこの地域の特徴でしたし、 非常に、日中、特にリーダーシップを取るというのはだれが見ても日本か中国だと思いますが、 それぞれに限界を抱えているということもあって、非常に一国一票平等主義というのが大きくありました。 それをやっているということは、当然、機構としてもあるいはいろんな条約を作っていく上でもやや弱くなるので、 ユーロとかNAFTAに比べると非常に弱い枠組みしか存在してこなかったということになります。

 今存在しているASEANプラス3へのアプローチというのはどういうアプローチがあるかというと、 多分私は二つのアプローチがあると思っているんですが、一つは、 中国が提唱している非常に強い政治的な意思を持って経済統合に向かうと。 政治的意思だけではでも動きませんので、じゃどうするかというと、自分の大きなマーケットを開けて、 中国への輸出が伸びるという実利でみんなを引っ張っていくというアプローチ。 余り、条約ですとか、中国はまだWTOに入ったばかりですので、 WTOのルールですとか実際の運用ですとか経験もございませんので、 そういう制度下でもリーダーシップは取れない。そうすると、途上国なりに政治交渉で一つずつ交渉しながら 実利を実現していくというので結束していくというのが中国のアプローチになっております。

 中国は既にASEANとの自由貿易協定の交渉に入っているんですけれども、 それは極めて長期のアプローチを取っていまして、十年間の間に作るということですので、 それは十年の間に中国がWTO加盟国としてちゃんとできるということを織り込んでやろうとしているということに なります。

 一方、日本、我が国はどういうふうにやってきているかといいますと、中国とは全然違う。 割に実務積み上げ型の、ようやく日本・シンガポールEPA、経済緊密化協定というのができましたけれども、 割と制度の整った国からやっていこうとしていて、どうしても条約、 日本とほかのアジアでは自由貿易協定の条件は違いますので、日本は先進国なので、 途上国が許されている授権条項という、自分のできるところだけやればいいという条件は保障されていません。

 つまり、多分畠山参考人からお話しあると思いますが、日本の加盟する自由貿易協定というのは サブスタンシャリーオール、ほとんどすべての貿易を必ずカバーしなければいけないという WTOの枠が大変厳しく掛かっております。したがって、サボることはできないので、 それは中国・ASEANのような途上国同士のFTAなんだから、 それなりに頑張っていればまあいいじゃないか、FTAとして認めてくれというものでは 日本はFTAを作ることはできない。この条件の違いがありますので、 どうしてもやっぱり制度的に考えざるを得ないと。

 したがって、短期で割と急いで作ろうとはしていますけれども、どうしても制度が整った、 守ってくれそうな、できる国からの積み上げになっていまして、シンガポールの後、 話題になっているのはメキシコであり韓国でありという順になります。

 ただ、第三国はこの二つのアプローチをどう見ているかということもあるわけでして、 当然、アメリカにしてもヨーロッパにしましても、マハティールさん的な、 オールアジア対西洋的なブロックになるのは当然望ましくないので、 開放的であってほしいということはありますが、その一方でAPECが、 お茶飲みサロンとは言いませんけれども、非常にソフトな枠組みで終わっているという認識はかなり強いので、 アジアだけでどのぐらいきちんとしたものができるかというのはかなり厳しく見られていると 考えるべきだと思います。

 それから、中国は一応十年という時間軸を設定しているんですけれども、 日本は時間軸に関してコミットしたことはありませんので、外から見ていますと、 一体、いつどうやってできるのかというのがあるかと思います。

 それと、当然のことながら、やっぱり日中がすぐにうまくリーダーシップを協力して取れる、 例えば独仏が手を結んでヨーロッパ統合の中核になっていったような図が日中間にすぐできるかというと、 そうだと思っている人はほとんどいないので、その日中の違うアプローチがどういうふうに 組み合わさって東アジアをリードしていくかというのも非常に不安な目で見られているところもあると思います。

 そしてあと、多くの人、特にアメリカの信用調査会社の人たちとよくしゃべっていると、 本当にこれをやってアジアの成長が日本経済の突破口になれば、それはすごく大きな突破口になるというふうに おっしゃってくださるんですけれども、問題は、さあ、じゃ実行してくださいと、 すぐ市場の期待が高まるようなエビデンス出してくださいということになってしまうので、 それはかなり時間が切迫してきていると言うべきだと思っています。

 今までいろんな議論が進んできていると思うんですけれども、何しろ日本は非常に経済自体が大きいですので、 ほかのシンガポールですとか韓国と違ってやっぱり大変大きいので、 ちょっとやそっとのFTAをやっただけでは、それが魔法の薬のように効いてくるということはもちろん 余り期待できないと思います。

 お手元の表一とかにFTAがどういう組合せでできたらどうなるかという、 表一、FTAから脱落した場合どうなるかというのを、ちなみに簡単なコンピューターで計算した結果というのを 多分お配りしていると思うんですけれども、これは上が組合せ、いろんなFTAの組合せですね。 ジャパン・コリアとか、ジャパン・チャイナとか、チャイナ・コリアとか、 ジャパン・コリア・チャイナとか、ASEANプラスジャパン・コリア・チャイナとか、 もういろんな組合せでして、左方の縦に並んでいる順番がそれぞれ、中国、日本、韓国に対して どういうインパクトがあるかというのを簡単に計算したものなんですけれども、 要は、ASEAN・ジャパン・コリア・チャイナという最大のFTAができても、 単純に計算すると日本のGDPは〇・三二%ぐらいしかアップしません。

 これは、例えばASEANプラス3ができると韓国のGDPというのは実に三・六六%もアップし、 中国でさえ一・五%アップするので、〇・三二というのは余り大した数字じゃないように見えますが、 ただ、これは全く今を延長しただけ、コンピューターの計算というのはあくまでもそうですので、 実際にバブル崩壊以降、やっぱりアジアへの貸出しとかアジアへの輸出が日本経済を支えてきたことを考えると、 サブスタンシャルにこの地域の経済交流は自由化することというのは やっぱり非常に大きな意味を持っていると思います。

 ただ、表面的にはすぐに効く薬ではないように見えるので、なかなかコンセンサスができないというか、 非常に関心が国内でそれほど、マスコミが騒ぐほどではないということがあると思います。

 もう一つはやっぱり構造改革、今、正にやっているわけですけれども、 これと連動しないとほとんど意味はございませんので、どの国も日本に対する期待で 農水産物の輸出というのはもう避けて通れないですし、日本・フィリピンの自由貿易協定の中で、 看護師を引き受けるのはどうかと、看護婦さんを引き受けるのはどうかという意見が出ているように、 やっぱり高齢化対応が自分の国にとってビジネスになるんじゃないかというのはそれは当然の相手国の関心ですし、 自分自身で青写真を持って組み込んでいきませんと、FTAで約束していることと中が 全然ばらばらというふうにはいかないということです。

 それから、中国の速度は大変速いピッチでいろんな動きをしておりますので、 やっぱり戦略的に取り組んでいく必要があります。対象の相手国をどうやって進めていくかとか、 交渉優先順位をどうやって位置付けるかとか、時間軸をどう設定するかとかというのは大きなイシューですし、 各国の注目を浴びていますし、特に日本と中国の間の関係というのがそれに沿ってどう進んでいくか ということも大きな点としてございます。

 最後に、じゃ結局、ASEANプラス3に取りあえずなるとして、 どういう感じの設計ができるかという知的なリーダーシップというのを日本に 大変求められていると思います。取りあえず、日本・韓国が日本・シンガポールに続いてで きるかどうか分かりませんが、できるとすると、一つの可能性というのは、 日本・韓国という資本市場も全部開け、MアンドAもすべてできて、人と物の、物の貿易は かなりの程度OECD水準で関税が下がっていて、人の移動も日韓間は毎日一万人の人が移動しております。 年間四百万の移動がございますので、人の移動も物すごく大きくて先進国の制度水準を持っている国が 例えば関税同盟のような形で大きな市場統合をして、そこにみんながぶら下がってくる、 どんどん我も我もと参加してくるというヨーロッパ型というのは一つのアイデアですし、 それとも、じゃ、そのバイをどんどん積み上げていくのがいいのかという議論は当然あるべきです。

 それから、WTO二十四条という、途上国と先進国のFTAは違う立場を定めているものが 一体どういうものであってというのをやっぱり理解してコミットしてもらう必要があります。

 結局、自分だけが非常に厳しい義務をかぶっているけれども、ほかはみんな途上国だからすごく甘い協定でも FTAと呼んでしまおうというのは、私は外交上は日本にとって非常に不利だと思いますので、 中国・ASEANは、中国は中国・ASEANのFTAを二十四条内に必ず入れると宣言していますけれども、 それが本当にできるかどうかは十年たってみないとだれにも分かりません。

 でも、この二十四条をきっちり守った形でできるというのは、域外国にとってはアジアの信頼に関して 非常に大きなイシューですので、日本はイニシアチブを取っていく必要があると思いますし、 その貿易政策、貿易関連に関しては日本は経験をたくさん持っていますので、 やっぱり各国のキャパシティービルディング、それぞれの能力の向上に協力していくことが 日本がイニシアチブを取っていける道ではないかというふうに思っております。

 ほぼ三十分になりましたので、ちょっと速いスピードであったかもしれませんが、 私の報告は終わらせていただきます。

○会長(関谷勝嗣君)

大変ありがとうございました。
 次に、畠山参考人から御意見をお述べいただきます。よろしくお願いします。

○参考人(畠山襄君)

 畠山でございます。

 今日は、こういう機会をお与えいただきまして、大変ありがとうございます。関谷先生始め、私、昔、通産省におりまして、いろんなところの局長なんかで国会にお世話になりましたときに御指導いただいた方あるいはそれに関連した方がおられて大変、懐かしいと言っちゃ語弊がございますが、ありがとうございます。

 今、深川先生がアジア全般のことをお話しになりましたけれども、私の方は、やや東アジア地域の経済統合に限って、そしてややテクニカルなところが入るかもしれませんけれども、焦点を絞って申し上げたいと思います。

 まず、東アジア地域というんですが、それはどこかということでございますが、第一表にございますようなアジアNIESの四か国、四経済、それからASEAN4、それから中国、それから日本と、この国々あるいは経済を指すのが普通でございます。

 ここで強調させていただきたいのは台湾の重要性でございます。台湾は国ではありませんけれども、特別関税地域でございますが、三千億ドルのGDPを、これは二〇〇〇年の数字ですけれども、誇っておりまして、ASEANのほかの国よりもどこよりも大きいと。インドネシアが一番大きいわけですが、それの倍もあるということで、東アジア地域の経済統合を考える場合に台湾抜きということは考えられないということでございます。

 それから、経済統合とは何かということでございますが、レジュメの一ページに戻っていただきまして、普通こういう五つの分類をいたしております。

 自由貿易協定、これはそのメンバー国の関税なり、その他の輸入障壁をメンバー国の間だけで撤廃するということでございまして、典型は北米自由貿易協定、NAFTAでございます。アメリカ、カナダ、メキシコでやっているNAFTAでございます。

 それから、関税同盟というのは、典型は昔のECと言っていたころのEECですとか、今、ブラジルとアルゼンチンとパラグアイとウルグアイでメルコスールというのを作っていますが、これが典型でありまして、どういうものかというと、自由貿易協定なんですが、その対外的な関税を統一すると。

 だから、例えばEUですと、日本に対する自動車の関税は一〇%と。ドイツの関税もフランスの関税もみんな一〇%と、こうなっているわけですが、単なる自由貿易協定、@の方ですと、例えばアメリカの自動車の関税は二・五%だけれどもカナダの自動車の関税は九%だとか、メキシコは二〇%だとか、そういうふうにばらばらになっているわけです。

 それで、その先が共同市場、これは普通は商品の自由流通を確保するとか人の移動をあれするとかいうことで、EUはこの状況に九二年から達したと考えられております。

 経済同盟というのは、金融政策とか財政政策、経済政策を統一するというわけですけれども、これは今の、金融政策はある程度統一していますが、それでもEUはイギリスが金融政策統一していませんし、そういうことでいうと、このCはまだ実現しているところはないと思いますが。

 学者の分類ですと、この完全な統合という方は、中央銀行の設立ですとか単一通貨の設定とかいうことですので、むしろDは今のEUが実現をしていると。EU全体ではありませんけれども、イギリスが抜けたりしていますが、ある程度実現していると、こういうことになります。

 そこで、東アジア地域の経済統合という場合にこれから我々はどれを目標とするかというと、この自由貿易協定に限られると思います。関税同盟まで行けないということでございます。時々、東アジア地域との経済共同体をとかいうような、例えば経団連が今年一月に出した提言なんかにそういうことが出ていますが、仮にそれがここにありますB以下のことも示唆しているとすれば遠い夢のまた夢みたいな話でありまして、まず目標とすべきは@の自由貿易協定であろうと思います。

 それで、自由貿易協定とそれじゃWTO、この間、非公式閣僚会議がございましたけれども、どういう関係になっているかというと、二ページにございますように、先ほど深川先生からもお話がありましたが、ガットの二十四条、それからサービス規定のGATSの五条におおむね似たようなことが書いてありまして、物の話で申し上げますと、実質的にすべての品目をそのFTAの対象とすることと、そういうようなことになっております。

 この実質的にすべての品目を対象とすることというのはどういう意味かというと、(3)にございますように、特定のセクター、例えば農産物を丸ごと対象から除くというようなことは許されない。全部含めないまでも、そのセクターをある程度含めないといけない。それから、その国の輸入金額の九〇%以上の品目をFTAの対象にするということであります。

 ここで第三表をちょっとざっとごらんいただきますと、日本へ農産物を供給している上位三十か国というか三十経済であります。一位が米国で、二位が中国、以下カナダ、オーストラリアという具合に続いておりますが、一番右の欄をごらんいただきますと、その国からの農産物の輸入のシェアが、全体の輸入に占めるシェアが出ておりまして、アメリカは二四%は農産物で来ていると。カナダに至っては五一%であるというようなことが分かるわけであります。それで、したがって、農産物を対象にせざるを得ないわけですけれども、それを丸ごと除いたりすることはできないということであります。

 「日本の選択肢」というのが次に書いてありますが、ちょっとそれは後にしまして、日本の現状は、ざっとおさらいをさせていただきますと、三ページにございますように、今まで、二、三年前までは日本はWTO一辺倒と言っちゃ語弊がございますが、端的に申し上げて一辺倒で、WTOだけで参ったわけでございます。

 それは、理由もありまして、メンバー国は、FTAはいいわけですけれども、非メンバー国を差別するわけでございますね、非メンバー国に対しては差別と。WTOの目的は自由、無差別というのが原則ですので、その無差別という方に触れるということで、WTO一辺倒で来たわけです。ところが、それを変更いたしました。そして、どう変更したかというと、FTAだけをやろうというんじゃなくて、WTOとFTAと両方を追求しようというふうに変更したわけであります。

 それで、その変更の大きな理由の一つは、第二表をごらんいただきますと、その変更の時点で、ちょっと古い話ですけれども、ここにシェードを掛けてあると思いますが、シェードを掛けた経済だけがFTAに手を染めていない。今、日本はシンガポールとやったとかいうことですのでちょっと別ですが、その時点で、変更するときの時点では日本と中国と韓国と台湾と香港と、これが世界の、世界経済の九割を占める国三十か国の中で、この五か国というか、五つの経済だけが自由貿易協定に手を染めていないという状況になっちゃったと。そうすると、これは差別だから良くないねなんて言っていても、どこでそういうのを審査するかというと、ガット二十四条の委員会で審査するわけで、その委員会のパネルに出てくる国はおおむね自由貿易協定に手を染めているという状況になりまして、幾ら正論を言いましても勝てないということになっている。そして国際的に孤立をしてきたということであります。FTAを結ぶと非常にその国の間と緊密な関係になります。WTOの交渉を全体でマルチにやるときにも、FTAの国とはどういうポジションになるというようなことで非常に親密になるわけでございます。それで孤立を防ぐということができる。

 それから、先ほど先生のお話にもありましたように、FTAは国内経済改革にプラスになります。例えば、EUの、ドイツの経済省の次官をやった人が日本に来まして言いましたのは、少しはアジアもヨーロッパの知恵に学んだらどうかと。ヨーロッパの政治家、各国の政治家はどうやっているかというと、ちょっと政治家の先生方の前で恐縮ですが、どうやっているかというと、悪いことはみんなブラッセルのせいにすると。悪いというのはつらいことですね。改革の提案その他、つらいことはEU事務局があるブラッセルの決定だと、だからしようがないもんねと。補助金を出すとかいい決定はおれがやったもんねと言ってやっているんだと。それで、そうやって実は改革を進めているのよと。それぐらいの知恵を出したらどうかねということを、日本に対してじゃないんですけれども、アジア一般に対して言っておりました。そういうことでございます。

 それから三番目には、FTAで実はWTOの新しい分野、例えば競争と貿易、独禁政策と貿易というふうなことについて実験ができるわけでございます。WTOでやろうとすると、百四十四か国いるので合意を取るのに大変なんですけれども、FTAだと二、三か国が相手ですので、あるいは相手国だけですので、そこでそういう実験を一応やってみまして、うまくいけばそれをWTOでやってみたらどうだというふうにできると。

 それから、実はFTAを日本が持っていないためにあちこちで実害が出てまいりました。例えばメキシコでございます。メキシコへアメリカ製品が輸出されるときは、NAFTAのおかげで、北米自由貿易協定のおかげでアメリカ製品は関税が掛かりません。それから、メキシコはEUとも自由貿易協定を結びましたので、EU製品をメキシコへ輸出するときも関税が掛かりません。ところが、日本品を輸出するときは、メキシコの平均関税率は一六%でございますけれども、一六%そのままが、平均関税ですからそのままが掛かるとは申し上げませんが、相当の関税が掛かるわけであります。そういうことで競争ができないということになってきました。最近、チリがアメリカと自由貿易協定でほぼ合意しましたし、EUとも合意しましたから、チリも同様なことになる。やがてほうっておくと似たようなことがずっとあちこちで起こるというようなことがありまして、それで方針を、WTOもやるけれどもFTAも追求するということになったわけでございます。

 その結果、先ほどのお話にもありましたように、シンガポールと自由貿易協定を調印して、そして国会の御同意も得て今発効になった、去年の十一月から発効したということでございますし、四ページにございますように、去年の一月に小泉首相がシンガポールを訪問しまして、その他のASEAN諸国も訪問しまして、その際に日本・ASEAN包括経済連携構想というのを発表いたしました。これは要するに日本とASEANの自由貿易協定をやろうという話でございます。それで、それを受けまして、去年の十一月に、十年以内に日本は日本・ASEANの経済連携協定を作ろう、作るべく研究をしようということで合意をいたしました。

 それから、それはASEAN全体との話ですが、(5)にございますように、フィリピンとタイとの間では既に個別にもう勉強会を始めております。それで、最近、これを見て、マレーシアがうちもやりたいという申出をしてこられまして、案を持ってこられたようであります。それから、韓国とは先ほどのような話でやっている。メキシコもやっておると。それで、そういう状況であります。

 国際状況はどうかというと、四ページの下にございます五のところですが、NAFTAが米州全体、キューバを除く三十四か国へ拡大しようということで、二〇〇五年を目標にやっております。これは二〇〇七年まで延びるんじゃないかとか説はありますが、そういうことでやっておりますし、EUは今の十五か国から最終的には二十七か国、トルコも入れば二十八か国という、拡大をすることになるわけでございます。

 それから、したがって、主要な経済圏、米州、それから欧州、それからアジアと、この主要な経済圏で全体を貫くFTAを持たないのはこの地域だけ、アジアだけということになるわけでございます。

 その東アジアでも、AFTAが元々ありますし、それから先ほどお話しの中国・ASEANがFTAを交渉中でございます。日本は研究するという合意しかしていないわけですが、向こうはもう交渉が始まっております。それで、これは非常に野心的でありまして、物の貿易の交渉は来年の六月に完了すると言っております。交渉ですね。その実施はそれから十年掛けたりなんかするんですけれども、交渉に関して言えば来年の六月に完了するというのが中国であります。

 それで、先ほどの授権条項という話がありましたけれども、授権条項だと関税をゼロにしないでもいいんですけれども、ガット二十四条だとおおむね九〇%以上は関税をゼロにしなきゃいかぬわけですが、関税をゼロにしますとASEANと中国が合意をしているわけであります。

 それから、それとは別に、朱鎔基首相は、最後に、日中韓FTAの可能性を検討しようという呼び掛けをいたしております。それから、ブッシュ大統領も対ASEANイニシアチブ計画というのを発表しまして、それでASEANの十か国と個別に、準備ができている国と個別にFTAをやりましょうと言っているわけでございます。

 そういう状況でございますので、日本の選択肢は論理的には次の三つでありますが、まず一は、今、シンガポールとやっていますので、シンガポールとの自由貿易協定だけにとどめて他の東アジア諸国とのFTAはやらないという選択であります。それから第二は、日本とASEANの自由貿易協定だけにとどめてその他はやらないという選択であります。第三は、この私の申し上げるところの東アジア自由貿易協定全般をやるということであります。

 私の個人的な提案は、できるだけ早い時期に東アジア自由貿易協定全般をやりましょう、やるようにしていただきたいということであります。

 それで、なぜかということでございますが、まず、一番目の日本とシンガポールだけにとどめて日本・ASEANをやらない、こうなりますとどうなるかといいますと、中国・ASEANは、さっき申し上げたように来年六月に協定が、交渉が終わるわけです。そうすると、結論から申し上げると、日本の空洞化が促進されて、もっと失業率が増えるということでございます。

 なぜかと申し上げますと、日本からASEANに輸出するときは関税が掛かるわけです。ASEANの関税というのは物すごく高いわけです。それで、ところが中国からASEANに輸出するときは、自由貿易協定ができますから、関税が、ASEAN側の関税が掛からないわけですね。そうすると、さなきだに中国へ移動している日本の企業は中国へ投資をして、中国から輸出するようにしようということになっちゃうわけです。逆もそうですね。ASEANから中国へ輸出するときには関税が掛からないわけですから、中国の関税ももっと高いわけですから、ASEANへ日本の企業を出していこうということになって、さっきの深川先生の言われるように、企業は何とかするかもしれないけれども、日本の国内の雇用はどうなるのさというところは困るわけです。ですから、中国がASEANとやることが確実である以上、日本もASEANとまず必ずやらなくちゃいけない、こういうことであります。

 それから、それじゃそこでとどめたらどうかという御意見もあろうかと思いますけれども、そこでとどめるとどういうことになるかというと、この地域に、東アジア地域に日本・ASEANというグループ、それから中国・ASEANというグループ、こういうふうに少なくとも二つが併存するような状況になるわけですね。それで、自由貿易協定の良さは、やがてそれが、先ほど申し上げたように、あるいは共同市場に発展するかもしれないというようなことがあるし、それからそれを土台に、自由貿易協定を土台に通貨協力が行われるとか、あるいは安全保障の協力も行われるとかいうことになり得るわけでありますけれども、現にEUの発展なんか見ているとそういうことが考えられるわけですが、それが二つに割れていて、中国・ASEANというのと日本・ASEANと、こうあるとどういうことになるのか、具合悪いと。

 それからもう一つは、さっき申し上げたように台湾でございますが、台湾はASEANのどの国の経済規模も凌駕する倍ぐらいの大きな経済体でありますが、これがはぐれガラスになるわけであります。そういうこともありますので、台湾も含めて全部入れた自由貿易協定を作るということが焦眉の急であろうと思いますし、実はこの六ページの冒頭に書いてございますように、東アジア・スタディ・グループというのがASEANプラス3の枠組みの中でできておりまして、そこから各国経済大臣、日本で申し上げると平沼経済大臣ですが、は宿題を出されているわけです。宿題は、東アジア自由貿易協定の設置についてどう思うかということでありまして、その回答を今年の十一月のASEANプラス3の首脳会議に出さなくちゃいけないという、そういう立場に今、日本のみならず、ほかのASEANプラス3の国々も置かれているわけでございます。

 そういうことでもありますので、具体的に申し上げれば、この秋の日本政府の回答は、東アジア自由貿易協定をできるだけ早く作ろうということであってほしいというのが私の切なる願いであります。

 それで、その際の問題点がしかし幾つかございます。

 第一は、先生方お詳しいように、農産物の問題でございます。ただ、私、個人的な意見ですが、これについては幾つか申し上げたい点があるんですが、農産物は、どうしても食糧安全保障上譲れない品目というのがあるとすれば、その品目は断固として守るということにしたらよろしいかと思います。断固としてそれは守る、しかし、その品目はできるだけ数を絞ると。そして、それ以外の品目は、断固として守る品目を守るために十重二十重に取り囲んだりしないで、それ以外の品目はできるだけ自由化するという方針にしていただいたらどうかと思います。

 それから他方、今食糧安全保障とおっしゃる割には、輸出国、農産物の輸出国が輸出制限をしたりすることについての規律がガットでは不十分なわけです。昔のガットはどうなっていたかというと、農産物輸出国の需給、農産物の需給が逼迫したときには輸出制限をしてよろしいと書いてあったわけです。それで今も書いてあるわけです。今も書いてありますが、WTOの下では相手国と相談しなくちゃいけない、協議しなくちゃいけないという規定が入りましたが、しかし協議ですから、協議が調わないときは輸出規制はできるわけです。そんなことじゃ食糧を輸入に依存するわけにいきませんので、この輸出規制は是非撤廃、そういうことができる規定は撤廃して、輸出国の消費者も輸入国の消費者も同じように自由貿易の利益を均てんできる、あとは価格だけの勝負ということにしてもらわないといけないと思います。

 そんなこと言ったって逼迫したときには駄目に決まっているよという御意見もありますが、今はそういうことが適法に行われるようにWTO上なっているわけですから、少なくともそれが違法になるように直さなくちゃいけない。農林水産省はその点を当然熟知しておられまして今回のWTO交渉で出しておられますが、それをFTAの方でも入れたらどうかというのが私の申し上げている点であります。

 それから、農水省の方の一部に懸念があるのは、WTOはまだいい、関税をゼロにしろなんて言わないもんね、ある程度率を減らせということになるのに、FTAの方は関税を九〇%の品目についてゼロにしろと言ったりしているんだから、こっちの方がきついよねということをおっしゃる向きもあるんですが、実はこの間の非公式閣僚会議でも、WTOの非公式閣僚会議でも明らかになりましたように、WTOの世界では例えば、これは提案でしかありませんけれども、九〇%以上の関税の品目は、その最低四五%の関税、四五%に相当する関税を削らにゃいかぬというようなオファーが出てくるわけですね。そうすると、さっきの食糧安全保障上どうしても守らなくちゃいけない品目も、そういうのの観念的には対象になってくるわけです。

 そういうことよりは、FTAの方で特定の品目、要するに九〇%は自由化しなくちゃいかぬわけですけれども、残りの方の一〇%の方に食糧安保上どうしても守らなきゃいけない品目を整理すれば、そうすればFTAの方は可能になるわけでございまして、FTAが一概にWTOより具合が悪いということは、農林水産的な見地からごらんいただいても、そうではないんじゃないかと思います。

 それで、ラフな計算でございますけれども、アジア諸国からの輸入のうち、仮定ですけれども、工業製品の関税を全部ゼロにする、そして農林水産物の関税は五%未満の、あるいは五%以下の関税が掛かっているものだけを関税をゼロにすると。やると、大体その輸入の九〇%をカバーできます。ですから、それほど難しいことを申し上げているわけではないと思います。

 この東アジア自由貿易協定の実現のための第二の問題点は、中国でございます。

 中国は、先生方御案内のとおり、社会主義市場経済を標榜いたしておりますけれども、しょせん共産党政権であります。共産党の議員の方おられたら失礼したいと思いますけれども、共産党政権であります。それで、その共産党政権、一党独裁の政権と本当に自由貿易協定といって抱き合えるのかという基本的な問題があります。

 それから、もっとテクニカルに申し上げれば、WTOに中国は先ほどのお話のように加入したばかりでありまして、WTOの約束を守れるかどうかも分からぬわけですね。それで、それをよく見なくちゃいかぬという問題もあります。

 それから、もっとテクニカルに申し上げると、実は中国がWTOに加盟したときに対中特別セーフガードという特別の制度ができました。普通のセーフガードは、セーフガードと称して輸入制限をするときには全加盟国を相手に輸入制限をしなくちゃいかぬわけです。そこからの輸出が増え、例えば韓国からの輸出が増えているといっても、韓国をねらい撃ちにするなんということはできないわけです。ところが、対中特別セーフガードは中国をねらい撃ちにしていいという合意ができているわけです。中国の加盟の条件であります。

 それから、一般的には、日本が昔やらされた輸出自主規制というのがございますね。セーフガードに替え、自分が輸入制限をするのは、手を汚すのは嫌だから相手国に輸出制限を頼む、輸出規制を頼む、自主規制を頼むということがWTOではこれは禁止されたわけです。輸出自主規制は要求してはならないと、今度そう決まっているわけですけれども、中国に対してだけは輸出自主規制を要求していいという条件が付いたわけであります。

 それで、この対中特別セーフガードというのは、中国が加盟してから十二年間有効なわけです。今からしたがって十一年有効なわけです。

 その前に、東アジア自由貿易協定を作って、自由貿易だもんねといって中国からの輸入はどんどん自由で日本に入ってくる。対中特別セーフガードの適用もできないというようなことになると、EUはそれができる、アメリカはそれができるのに、日本だけがその権利を放棄していいのかという問題もあります。そういう問題。

 それからもう一つは、台湾と中国の関係というのがあります。台湾を東アジア自由貿易協定に入れることについて中国は快く思うかどうかという問題があります。それから、台湾も中国と自由貿易協定をやるのを快く思うかどうかという問題があります。

 そこで、くどくど申し上げて恐縮でしたが、私の個人的な提案は、東アジア自由貿易協定の中にガット三十五条のような協定の不適用という規定を特別に入れておいたらどうかということでございます。日本も中国も台湾も韓国もその他もみんなメンバーになると。そして、一つ傘の下、東アジア自由貿易協定という傘の下に身を寄せるんですが、その特別の条項を援用すれば、その二か国間の間では自由貿易協定に当分入らないでいいという規定を設けたらいいんじゃないでしょうかということであります。

 それから、最後でありますけれども、最後の課題は、政治家の方々のリーダーシップであろうと思います。東アジア自由貿易協定の実現に向けて、いろいろ御意見はおありとは思いますが、是非積極的なリーダーシップをお取りいただけると幸いだと念じております。

 ありがとうございました。

○会長(関谷勝嗣君)

 大変ありがとうございました。
 これより質疑を行います。

■野上浩太郎

自民党の野上でございます。

 両参考人に本当に有意義なプレゼンをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

 一点ずつお伺いをしたいと思いますが、まず深川参考人に、お話の中で、ASEANプラス3への道を 模索する中でいろんなアプローチがある、中国型アプローチもあるし日本型アプローチもあるというお話の中で、 中国型アプローチの中で実利主義というお話がございました。 中国とASEANのFTAが十年をめどに今模索をされている中で、しかし一方で、 中国とASEANというのは、その直接投資の受入先としても競合してきますし、 労働集約的な製品を輸出するという、そういう産業構造あるいは輸出品目の部分でも かなり競合してくる部分が大きいと思うんですが、それを受けて、当初、 例えばタイとかシンガポールは中国とのFTAには大変前向きであったと、もう一方、 インドネシア、マレーシア、フィリピン等々は後ろ向きであったというような状況もありましたが、 最終的に中国とのFTAにASEANが踏み出した、そのインセンティブを、 それはASEAN全体の方向性というものもあると思うんですが、 各国の思惑というものもやはり少しずつ違っていたと思いますので、代表的な部分で結構なんですが、 その全体の方向性と各国の思惑の部分を分かる範囲で教えていただきたいなと思います。

 それから、畠山参考人につきまして、東アジア全体の経済統合を進めていくべきだと、 その三つの選択の中でそれを進めていくべきだと。私もそのとおりだと思いますし、 今の吉田先生からのお話の中で、拡大順序の方向性については、もう同時並行的にやった方がいいんだと。 恐らくそのとおりだと思います。

 実は、そのことをちょっと視点を変えてみますと、日本にとってはそういう進み方が非常にいいと思うんですが、 中国側から見たときに、中国がWTOに加盟をした、そしてASEANと十年の単位でそういう方向性を 模索をしていますときに、例えば日本はこれからASEAN諸国とFTAを模索していく、 韓国は日中韓の模索をしていくと、いろいろな方向性があると思うんですが、 中国の進む戦略といいますか、インセンティブといいますか、方向性というのはどういうふうに考えられるか、 その点をお聞きをしたいと思います。

○参考人(深川由起子君)

 私は、ASEANにとっての中国との自由貿易協定、 御指摘がありましたように、確かに産業構造ははるかに日中より競争的ですので非常に 当初はつらいと見られていたんですけれども、やっぱり踏み切った理由は二つで、 一つは中国が、例えばインドネシアからのパームオイルだとか、あるいはタイの農産物だとか フィリピンだとかにどんどん前倒しで約束をしているんですね。中国は決してやっぱり農業の生産性が 高いわけではないので、多分相当、多分民主的な国であると相当難しいはずの約束をもうしてしまっているんですね。 そのぐらい政治的意思が強いんだったら付いていこうというのが、ASEANの気持ちがまず一つありますし、 ただ、中国は非常によく計算していて、あくまでもそういうのは一部の品目だけで、結局できるのは、 時間を掛けてできていくわけですからその間に自分の構造改革が進めば別に怖くないんだという、 やっぱり今、勝ち組の自信というのがあるので、そういうものが表れていると思うんですけれども。

 それからもう一つは、やっぱり中国から直接投資を誘致したい。これは日中間で起きたことが 中国・ASEAN間で起きてほしいというASEANの希望は当然あると思います。 つまり、中国の企業がASEANで作って持って帰るものが増えてほしい。関税がゼロであれば、 例えばASEANの比較優位が幾つあるかというのがまた問題なんですけれども、 例えばアグロベースのもの、農水産物を加工したような食品ですとかで、為替も下がっていますから、 ASEANが中国に対してある程度競争できるものというのは、南洋の食物も含めていろいろありますので、 それを少しなりともやっぱりやってほしいという気持ちは当然あると思います。

 中国型アプローチ、日本型アプローチというのは実は非常に補完的で、 中国は多分制度的なマインドというのをはるかに強く持たないとリーダーシップは取れないですし、 日本は政治的意思と実利を相手に約束できないと、 自分の痛みはちょっとでも嫌、でも外交的には必要だからやりたいというのでは、 それは相手は納得してくれっこないですので、実は日中のアプローチというのは補完的だということを 申し上げたいと思います。

○参考人(畠山襄君)

 お答え申し上げます。

 中国の方向はどうだろうかと、日本が東アジア自由貿易協定を一生懸命進めようとするのはいいとして、中国には中国のスケジュールもあるんじゃないかというような御指摘だったと思いますけれども、御指摘のとおりですが、まず中国は、二〇〇四年ですから来年ですね、来年の六月までに、先ほど申し上げましたように、ASEANとの間では物の自由貿易協定は交渉を終了するという目標にしているわけでございます。それで、ASEANとそれに合意しているわけでございますね。それが一つ。

 それから、朱鎔基首相は、この間の十一月のASEANプラス3の首脳会合のときに提案をしまして、日中韓自由貿易協定を民間の機関で研究をしようではありませんかと言われたわけですね。その陰には、やはり非常なこの地域でリーダーシップを取りたいという中国側の意識があるわけですね。

 それで、例えば社会科学院というのがございますけれども、その研究会に去年の秋、私、出ましたけれども、そこで彼らの有力な一人が言うには、世界は九〇年代の後半から自由貿易協定の時代に入ったと。ところが、この地域だけはその問題に遅れた、日本がリーダーシップを取らないからだと。そこで、中国がリーダーシップを取って中国・ASEANのを始めたなどと言うわけです。それは歴史に反していまして、日本とシンガポールが皮切りで、ようやく中国も慌て出したというのが実態ですから、日本のリーダーシップにフォローしたんだとは思いますけれども。

 ただ、申し上げたい点は、中国は明らかにリーダーシップ、この地域での経済的なリーダーシップも取りたいんだという背景の下にいろんなことをやっておるということでございますので、言い方が悪うございますが、中国がもし余りやりたくなければ、東アジア自由貿易協定を、それならなおさらのこと日本の方はやろうやろうということを言って、中国を受け身に回らせて、この地域での経済的なリーダーシップを取り戻すということにした方がよろしいんじゃないかというふうに思います。

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